内山安雄のアジアンな日々

奨学金制度を主宰する職業作家、内山安雄の主戦場であるアジアの話題を中心に

母親の思い出

感傷ーーあまり好きではない感情です。が、亡き母親の、どうでもいいことを思い出すと、いい歳こいて、ふとこみ上げそうになるものがある。

小学校時代から不和で没交渉だった父親と和解し、物書きとして一本立ちした直後から、2人の親にそれぞれ盆暮れに贈答袋入りのお金を欠かさずにプレゼントしてきた。

が、母親は10数年間、一度も使っていなかったとわかる。

「ヤスオが何かで困った時のためにとっておいてあるんだ。とても使えないよ」

とくり返し周りにいっていたらしい。

それを知った私が、「ちゃんと一円残らず母さんが、自分だけのために使ってくれよ、お願いだから」と頼み込んだことで、初めて使うようになったそうです。

引き出しの奥に長らくため込んであった私からのお小遣いのことを思うと、ふと今でも何かの拍子に切なくなります。

一方、亡き父親は、盆暮れに私から贈られたお金を使っていた?

いえいえ、初七日に実家の書斎の文箱を開けると、何十枚という開封していない贈答袋が、私からのお小遣いが、そのまま出てきました。親の思いをしみじみと……。