西伊豆の老舗旅館に逗留したおり、フロントを通りかかるたびに妙齢の美人と、なぜか視線を合わせてしまいます。この私を熱いまなざしで見ているような。思い過ごし、早合点? ではないようです。この私に気がある? そう思いたくなるような視線なのです。遅すぎるモテキ?
で、チェックアウトの朝、その美人がいうのです。
「ウチヤマ先生の以前からのファンなんです」
なんと奇特な、なんと珍しい、なんと不思議な、前代未聞の体験です。
で、旅館向けに、といって、若女将から色紙を差し出されます。苦手です、が、成り行き上断り切れません、で、一筆啓上。
差し出した色紙を見て、お嬢様とスタッフの顔がにわかに曇りました。
実は、生来の救いようのない悪筆なのです!何を書いたのか、わかるのは書いた本人だけです。
アハハハハ、きっとあの色紙、棄てられたでしょう。